在宅勤務をしていたら顎関節症になった話

 

 

「パキッ」

 

何の音を想像するだろうか

 

センター数学を解く受験生にとってはシャープペンの芯が折れる音かもしれない

手作りチョコを作る若人にとっては板チョコを割る時の音かもしれない

不眠症にとっては天井から不意に発せられるラップ音かもしれない

 

 

 

コロナ感染者が急増した3月末、会社の方針で原則在宅勤務が言い渡された

4月で帰任する出向者の最終出社日に立ち会いもできず、混乱の中リモートワークはスタートした

 

過去に一度、資料作りのために在宅勤務しながら休日出勤した際、リビングのローテーブルで6時間仕事をして腰が壊れたことがあった

今回は長引きそうだからということで、会社と同じ環境にすべく、オフィスデスクとオフィスチェアを設置し万全の態勢を早々に作り上げた

 

パソコンチャット全盛の時代に中高を過ごし、大学でSkypeにも触ったことのある自分にとってはそれほど大変なことはなかった

一方で、もう少し上の世代の人たちは慣れるまでは苦労している様子だった

 

そんな環境の中で、出社時と比較して雑談は目減りし、固定電話は使わず会社スマホでの通話が増えた

打ち合わせにも必要最低限の参加でよくなったため、資料をよく読み、しっかり考え、短いタイピング時間で集中して決裁書を作っては、また資料をよく読むといういい流れで仕事ができた矢先、やつがやってきた

 

「パキッ」

 

在宅開始から1ヶ月経った頃、食事をするときに左の顎から音がするようになった

 

「パキッ」

 

2ヶ月経った頃から、アクビのたびにやはり左の顎から音がするようになった

 

「パキッ」

3ヶ月経った頃には、電話会議で声を出すたびに顎が鳴り、音と共に形容し難い痛みを伴うようになった

 

お喋り大好き、口から生まれた口太郎ことこばやしには酷だった

 

打ち合わせの持って行き方としては「パキッ」

お客様の好みに合わせるために「パキッ」

どう落とし込んでいくか議論します「パキッ」

 

いたい、うるさい、いずい

 

我慢ならず、緊急事態宣言明けに実に8年ぶりに歯医者に行くことになり、あっさりと軽度の顎関節症を診断された

 

驚くことなかれ、1番の原因はなんと頬杖だった

一度ぜひスマホを置いて頬杖ついてみてほしい

 

上の歯と下の歯、強く噛み合って顎に力が入っていないだろうか

 

この体勢こそが、顔の複雑な筋肉に筋肉痛をもたらし、なんやかんやで、音や痛みの原因になっていたようだ

 

考えてみれば、オフィスチェアに座り誰からも話しかけられない環境でディスプレイを注視できるとなると、姿勢は固まり自然と頬杖をつく時間がとてつもなく長くなっていたのだった

 

裏を返すと、これまで僕を顎関節症から救ってくれていたのは、固まった姿勢にならないよう、身振りを交えた他愛もない雑談であり、資料を見ればわかるのにわざわざ電話をかけてくる他部署の担当者であり、資料をじっくり見る時間もない忙しさだったのだ

 

原因がわかると簡単なもので、なるべく頬杖をつかないように心がけつつ、もし自然に頬杖をついも大丈夫なように日中にマウスピースをつかてからというもの、症状は再発していない

1日8時間以上座る環境の大切さを痛感したので今回は書いてみた

 

今の唯一悩みを挙げるとすれば、急遽電話がかかってきた時にマウスピースを外すために左手をよだれまみれにしなければならないこと

 

ぜひ今後は、「相手がマウスピースをつけているかもしれない」という前提で、「今から電話してもいいですか?」とチャットを入れることがビジネスマナーになることを願ってやまない